第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
ざあっと、舞い散る桜の花びらは
今でも鮮明に俺の目に焼き付いてる
ここには、もう宝物は埋まっていない
ねえ、潤…
今、しあわせ…?
「きっと、しあわせだよね…」
木の下のベンチに寝転がると、葉桜を見上げた。
この風景は…変わらない…
そして俺も…あの頃となにも変わりない…
「俺の宝物…代わりにここに埋めとこうか…」
あの時のまま、変われない俺を
ここに埋めてしまおうか
報われない思いを、ここに…
目を閉じると、瞼にあの光景が蘇った。
俺はいつまでもその光景を噛み締めた。
桜の花吹雪の中、いつまでも立ち尽くす二人の姿を…
そして、あの桜の木の下で終わった俺の恋を…
噛みしめた。
【願わくば花の下にて恋死なむ END】