第5章 翼をもがれた竜-episode1-
「ボン、抱き心地がいい…」
「ばか…」
そっとボンは俺のシャツを握った。
「もっと…櫻井…」
「はい…」
ぎゅっと抱きしめて、ボンの髪に顔を埋めた。
「ボン、いい匂いがする…」
「そんなわけあるか…」
「ほんとですって…」
胸に刺さっていた氷のような棘が溶けていくようだった。
ボンは温かい…そしていい匂いがする。
日なたに眠ってるネコみたいな匂い。
なんだか安心できる。
「櫻井も…いい匂いがする…」
「ほんとですか?」
「うん…」
そう言って俺の首筋に顔を埋めた。
すうっと息を吸うと、俺の首に温かい息が掛かる。
「凄く…いい匂い…」
やべえ…ちょっと…
勃っちゃう…
ボンの顔をみたら、女みたいに綺麗な顔をしてる。
長い前髪が目に掛かって、その瞳を憂いのあるものに見せてる。
そっと前髪を手でどけると、その綺麗な瞳がまっすぐ俺を見つめてた。
こんなにまじまじとみるの初めてかも…
凄く…かわいい顔をしていた。
そしてその表情は、無垢な子供そのもので。
昼間見せたあの激しさは、一体なんだったのだろう。
「櫻井…?」
「はい…」
「櫻井…」
「はい…」
「翔…」
「なんですか…ボン…」