第5章 翼をもがれた竜-episode1-
腕の中のボンが身じろぎした。
「しゃくらい…」
言えてないし…
「なんですか…」
「ぎゅってしろ」
「へ?」
「ぎゅ」
まだ寝ぼけてんのかなぁ…
「いや、あの俺、男ですけど」
ボンは薄っすらと目を開けた。
「しってう」
また目を閉じてしまった。
「ぎゅ」
「は、はい…」
ぎゅうっと抱きしめた。
細いと思っていた身体には、意外と筋肉がついていた。
靭やかな身体をしている。
「しゃくらい…」
「はい」
「ありがとう」
「え?」
そう言うと俺の腕から出て、背中を向けてしまった。
「…すまなかったな…気持ち悪かっただろ」
「いえ…そんな…」
「帰っていいぞ」
その背中が寂しそうで…
「ボン…?」
「あんだ」
「もう一回…ぎゅしていいですか?」
「え?」
「ぎゅ」
返事を待たずに、ボンの背中を引き寄せた。
無理やりこちらを向かせると、ぎゅううっと抱きしめた。
「櫻井…」
「全然…嫌じゃないです」
「え…?」
「むしろ、嬉しいです」
「嘘…俺なんかお前の好みじゃねえだろ」
「…知ってたんすか…」
「まあな。調べさせて貰ったからよ」
「じゃあ…遠慮なく」
俺はまたボンをぎゅうっと抱きしめた。