第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
新年度が来た。
今年も研究室には新たに3年が加わって、活気に満ちあふれていた。
俺は、相変わらず松本教授の傍にいる。
相葉くんと大野さんも変わらず、院でまだ一緒に研究をしてる。
「おーおー…ガキンチョども張り切ってるなあ…」
「だって、やっと自分のやりたいことできるんだからさ…松本研究室って、意外と人気高いんだってよ」
相葉くんが得意気に言うのを大野さんはニコニコして聞いてる。
「なんでさ?」
「んー?わっかんねえのかよ…松本教授だよ!」
「へ?」
「見てみろよ…もう40過ぎたおっさんなのにさ…あの色気…」
「お、おい?相葉ちゃん?」
大野さんがドン引きしてる。
「あー…童貞にはわからねえかあ…」
「ちょっ…おま、なんてこと言うんだよ!」
「え…?大野さん、まだ童貞なの?」
「ち、違う!ニノ!俺はっ…」
「いやいやいや…誤魔化さなくていいから?な?」
相葉くんは、去年やっと念願の彼女ができてどうやらさっさと卒業したらしい。
それにしても遅い春だけどさ…
「もう、こうなったら男に走ったら?松本教授なんかどうよ?まだ独身だし。あんだけいい男なのに独身って、どう考えてもアッチの人だろ」
「だーめ」
「え?」
「あの人、売約済みだよ」
相葉くんと大野さんが俺の顔を見た。
「ニノ、なんか知ってるの?」
「うん?……知ってるよ。ずーっとね…」