第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
「なに?手紙?」
夏の終わり。
バイトの最後の日。
大学から歩いて出るとき、郵便ポストに封書を投函した。
「うん…ちょっとね…」
「今時手紙って、ニノったら古風だね」
「そう?たまにはいいもんだよ」
「誰?女?」
大野さんと相葉くんが興味津々で聞いてくる。
女でも紹介してもらえないかと、この前から必死だ。
これだから童貞は…
「残念でした。親戚のお兄さんだよ」
「ふうん…なんで手紙なの?」
「メアドとか…知らないんだ」
「そっか…」
駅前まで一緒に歩いて、二人とは別れた。
これから講義が始まるまでは、学校で会うのは研究室関連のことだけになる。
暫く、休みらしい休みだ。
駅前のスーパーで買い物をしてから、家に帰った。
買ったものを片付けているとき、呼び鈴が鳴った。
「はい?」
「俺…」
ドアを開けると、そこに立っていたのは愛おしい人だった。
日々は流れていく
秋が来て、冬が来て
その間、俺達は変わらない日々を過ごした
いつもあの人の傍らには俺が居て
俺の部屋にはあの人が居る
何の約束もない関係―――
あなたが微笑む
あなたが笑う
あなたが…快感に漂う
ただ、それだけでいい…