第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
あなたが微笑む
あなたが笑う
あなたが…快感に漂う
ただ、それだけでいい…
世の中では、こういう関係を”禁断”っていうんだろう。
でも、多分俺たちはこれには当てはまらない。
だって俺は、松本教授の未来まで欲しいとは思っていない。
松本教授の未来は、俺が握っているわけじゃないから
「さ、これでいいかな…」
櫻井教授の蔵書をダンボールにまとめ終えた。
松本教授の本も混じっていたから、選別するのに偉い時間がかかったのだ。
後は、業者に取りに来て貰うだけだ。
「送付状、書かなくていいんですか?」
汗を拭きながら松本教授を見上げると、微笑んだ。
「うん…もう、書いてあるから…」
今まで見たこともないような穏やかな顔をしていた。
思い詰めたような表情は、ない。
「わかりました…」
ふと、松本教授のデスクを見た
黒革の小さな手帳が置いてあった。
そこに挟んであったメモが手帳からはみ出していた。
「ちょっと、待ってて…まだ資料あったかも…」
松本教授が部屋から出ていくの見計らってそのメモを取り出した。
「…やっぱり…」
そこには群馬県の住所が書かれていた。