第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
離れていく腕を掴んだ。
「何言ってんだよ」
「二宮は、未来がある。俺とこんなことしてたら…」
「関係ないっ…俺は学業だってちゃんとやるし、あなたのことだってちゃんと支える」
「だから…だめなんだって…」
「なにが?年齢が離れてるから?教授と学生だから?」
「そうだよ…俺がおまえの道を曲げてる…」
「違うっ…」
「今だったら…!」
強い力で振り払われた。
「今だったら、まだ…間に合う…もう、やめよう?」
「教授…」
一歩、歩み寄った。
「俺じゃ…足りないってこと…?」
「違う!そんなことじゃない…」
「俺は櫻井教授の代わりにはなれないってこと?」
「違う!そうじゃない…」
「…好きに…」
「え…?」
「好きになってもらおうなんて、思ってない」
「二宮…」
「あなたが誰を思っていてもいい。ただ、俺は…」
俺は、あなたが泣かなくなるまで…
あなたが一人で立てるようになるまで、傍に居られればいい。
「俺はあなたと一緒に居たい…」
使い捨てでもいいんだ。
あなたが笑ってくれるなら…
未来とか、将来とか関係ないんだ。
ただ、今、この瞬間を一緒に生きたい。
「あなたが必要としてくれるなら、傍に居たいだけなんだ…他には何も望んでない」