第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
「なあ、ニノ…?」
「ん?」
研究室は棚の位置なんかを変える作業に入ってた。
教授室の櫻井教授の荷物を纏めるのはだいたい終わって、後は送るだけになってた。
「その…なんか、あった?」
「なにが?」
「なんか…ニノ、凄く…」
「へ?何いってんの?」
「いや…なんか悩みでもある?」
「なんで?」
「うーん…上手く言えないけどさ…」
そこに相葉くんが割って入ってきた。
「なんか、色っぽいんだよな。ニノ」
「へっ!?」
「夏休みに入ってから急にだよなあ…」
ぴっと小指を立てた。
「もしかして、デキた?」
「はあ?」
「隠すなよ。もしかして卒業しちゃったか!?」
「そんなもんとっくにしてるわ」
言い放った瞬間、二人は固まった。
「に…ニノって大人なんだな…」
「なにいってんのよ…つかあんたらは童貞なわけ?」
ぐっと二人は詰まった。
そう…童貞なんだ…
バイトを始めてから、この二人とは距離がぐっと縮まった。
だからこんな口も平気できけるようになってた。
「んなわけねえだろー!なあ!おーちゃん!」
「そ、そ、そうだよな!雅紀!」
工科系に比べたら、理系男子ってまだマシだって言われてるけど…やっぱ、暗いからな…
こいつら見た目は悪くないのに勉強ばっかしてたから、未だに童貞なんだろう…