第5章 翼をもがれた竜-episode1-
「車、出せ」
「あ、はい…」
黒塗りのいかにもそれっぽい車を走らせると、ボンは寝てしまう。
その寝顔は子供みたいに無邪気なものだった。
家についてもボンは寝たままで。
しょうがないから担いで家に入った。
お手伝いさんが扉を開けてくれて、なんとかボンの部屋まで運ぶことが出来た。
こんだけ煩いのに、一向に起きる気配はない。
「ボン…ボン…あのお…俺、部屋帰りますからね…?」
「やん…」
え…?なんつった?
「ぼ、ボン…?」
「やだ…いかないで…」
キングサイズのベッドにぽつんと寝転がるボンは寂しそうで。
思わず手をギュッと握った。
「どうしたんです…?」
何も答えがない。
寝ぼけてるんだろうけど…
なんだ、このかわいらしさ。
「ボン…?」
声をかけてみたけど、やっぱり寝てる。
寝顔を見つめていると、規則正しい寝息が聞こえてきた。
ため息を付いて立ち上がろうとすると、握った手が離れない。
ボンが握りしめて離さないのだ。
「俺…どうしよ…」
困り果てて座り込むと、いつの間にか俺も寝ていたみたくて。
気がついたら、ボンの隣に寝てた。
「はっ…あ!?えっ!?」
ご丁寧に布団まで被って…
おまけに腕枕してる…ボンに…