第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
荷物を避けて、玄関から部屋に上がった。
入るとすぐ左手にはユニットバスがあって、そこを抜けると部屋になってる。
なんとか寝場所を確保してあったベッドに俺を寝かせると、教授は麻のジャケットを脱いだ。
「とりあえず、薬飲め」
そう言って、買い物袋の中から水を取り出した。
大人しく薬を飲んでいると、部屋についてるミニキッチンに教授は立った。
「台所用品はこれか…?」
キッチンの前に置いてあるダンボールを指差した。
「ええ…あの…」
「いいから、寝てろ」
しょうがないから横になってたら、手際よく教授はダンボールから物を出していく。
一人暮らし用に母親が買い揃えてくれたものばかりだ。
まだ真新しい鍋を、なんだか嬉しそうに見ている。
「懐かしいな…引っ越した頃、思い出す…」
独り言なのか、小さな声で呟いてる。
そんな教授の姿を不思議な思いで見ていた。
なんで…俺の家に教授がいるんだろ…
なんで…こんなに安心するんだろ…
気がついたら眠っていたみたいで。
いい匂いで目が覚めた。
「あ…」
「起きたか?ちょうどできたところだ」
鍋の中には、卵粥ができていた。
「さ…起きて…」