第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
その夏は、色々と重なって…
父親が地方に赴任することになって、さあどうするとなった。
俺は大学があるし、姉貴は社会人をやっていたが専門学校に通い直したところだった。
結局、家は姉貴が預かることになったが、俺は常々大学の近くに住みたいと思っていたから、思い切って言ってみた。
そしたら、あっさりと一人暮らしの許可が出た。
家賃を入れて、月に15万の仕送りを貰えることになった。
早速、バイト日に学生課に行って賃貸を探すことにした。
「え…一人暮らしするんだ」
教授室の片付けはまだ続いている。
なにしろ、櫻井教授の蔵書が多くて…
「ええ…これから遅くなることも増えるだろうし…大学の近くに住んでいたほうが便利なんで…」
「やっぱりこの辺に住もうと思ってるの?」
松本教授は汗を拭きながら、俺を見下ろした。
「この辺りは…家賃が高いから…」
「ふうん…」
中央線沿線で、どこかいいところがないかな。
大野さんが三鷹だから、そのへんもいいなあと思っていた。
「…じゃあ、いいところがあるよ」
その日の夕方、松本教授と一緒に大学を出た。
相葉くんと大野さんは、松本教授が部屋探しに付き合ってくれると知ると、さっさと帰っていった。
随分薄情なやつらだ…