第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
「おーい、そっち持ってくれー!」
相葉くんのでかい声が響く。
「あーい!」
これじゃ肉体労働と変わらないじゃないか…
バイトというのは、夏休み中松本教授の手伝いをすることだった。
あんまり拘束される日はないから、時給は凄く良かった。
だから大野さんと相葉くんと3人でそれを引き受けたんだけど…
「やること結構あるんだな…」
研究室の掃除やらなにやら、手始めにやらされた。
「すまないね。これが終わったら、教授室の方も頼むよ」
松本教授に変わってから、櫻井教授が姿を現すことはなかった。
だから、部屋の片付けは松本教授が少しずつやっていたようだけど、これを機会にいろいろと整理するようだった。
お昼ごはんを食べて、教授室に顔を出すと松本教授がソファで横になってた。
「あ…邪魔しちゃ悪いかな…」
相葉くんが言うから、俺達は研究室で片付けの続きをしてた。
一時間ほどして教授室に様子を見に行くと、ソファで松本教授は電話をしていた。
「…だから…行けないってば…」
険しい顔をしている。
「どうしてそんな勝手なことばかり言うの…?」
声が震えてて…
聞くつもりはなかったんだけど、思わずドアの外で固まってしまった。