第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
櫻井教授のよくない噂は、今までたくさん聞いた。
だけどソレを証明するやつなんて居なかった。
多分、櫻井教授は凄く遊んでたんだろうとは思うけど…
でもいつもひっそりと影みたいに一緒にいる松本准教授は、そんなこと関係ないみたいに清らかだった。
まるで小説の中の登場人物みたくて…
あの二人から目が離せなかった。
それから松本准教授は、教授になって。
櫻井教授の持っていた研究室やらゼミやら、そのまま引き継いだ。
やっていたことは、同じ研究だったからどれもスムーズにいった。
年が若いと言われてたけど、櫻井教授と二人三脚でやってたものだから、誰もそれを阻止することはできなかったようだ。
夏期休暇の前には、だいぶ研究室も落ち着いていた。
「ニノは夏休みどうするの?」
「ああ…どうしよっかな…」
俺は実家が都心だったから、帰省するってこともなくて。
相葉さんは千葉が実家だったし、大野さんちは東京でも西の方だし。
結局3人でつるむことになりそうだな…
「バイトとかしないの?」
「え…そうだな…」
でも肉体労働なんて嫌いだし…向いてない。
接客業なんて面倒だ。
「いい話がある」