第57章 願わくば花の下にて恋死なむ
色が、白い。
目がまだ潤んでいて、赤い。
興奮してるのか、頬は薄いピンク色に染まっていて…
強い目が俺を射すくめるように見ていた。
「な…なにを…?」
「あ…」
突然、松本准教授は俺の腕を離した。
「ごめん…なんでもない…」
ちらりとまた、俺の顔を見ると泣き出しそうな顔をした。
「あの…?」
「いい…すまなかった…行ってくれ…」
そのまま踵を返して戻っていった。
それが、彼との初めての出会いだった
「ニノ?」
また、相葉くんと大野さんが俺のこと待っててくれた。
「どうしたの?ぼんやりして…」
「いや…ちょっとね…1年の頃、思い出してた」
「ああ…桜見ると思い出すよね…」
「あ、桜といえばさ…櫻井教授」
「ん?なになに?」
大野さんがぽつんと呟いた。
「学生に手を出したのがバレて、クビだって」
「え…?」
学内に噂が広まるのは早かった。
噂には尾ひれがつくものだから、本当のところはわからないが、櫻井教授の退官は本当のようだった。
松本准教授が、そのまま教授になる。
ただ、それだけの事実しか俺達は知らなかったのに。
噂は物凄いことになっていた。