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ヘブンズシュガーⅡ【気象系BL小説】

第56章 傾城屋わたつみ楼


「…あのさ…」

玄関から雅紀が遠慮がちに声をかけてきた。

「ん?」
「余計なお世話だと思ったんだけどさ…」
「え?なに?」

雅紀が微笑んで振り返った俺の後ろを指差した。
目を向けると、そこには…

「智…」
「翔…」

かっちりとスーツを着こなした翔が立っていた。

「なんで…?」
「…髪、切ったんだ…」

近寄ると、俺の手からボストンバッグを奪い取った。

「だめだよ…なんで…」
「似合うよ、短いのも…」

雅紀を振り返ると、バツの悪そうな顔をしていた。

「どうしてもって…お願いされてたんだ…智の年季が明けるとき、黙って行くだろうから教えてくれって…」
「なんでそんな勝手なことするんだよ!」
「智」

腕を掴まれた。

「俺と、一緒に暮らそう?」

見上げた翔は、とても真剣な顔をしていた。

「…だめだよ…俺なんか、翔の傍に居ちゃ…」

親の借金の肩代わりにこんなところで働いていた俺なんか、傍に居ちゃだめだ…


初会から、ずっと俺のそばに居てくれた翔…

遠い世界の人だとわかっていても、好きにならずに居られなかった。

まさか男を好きになるなんて…思わなかった…

元々俺にはそんな趣味なかったし。

だから…今、このとき…この一会だけと思っていた
翔が来てくれる度に、切なくて潰れてしまいそうになりながら身体を開いた。

初めて会った時から、好きで…好きで…好きで…


でも、この想いはこの龍宮城から出してはいけなかった


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