第5章 翼をもがれた竜-episode1-
床に蹲る松本の襟首を持って引き上げた。
「俺と約束したよなあ?高校上がるとき。ヤクザになるんだからって甘えことしねえって…なあ!」
松本を床に投げつけると、また一発蹴りあげた。
「オイ…相葉ぁ!」
事務所の奥に向かって声を張り上げた。
「はいっ…」
相葉の兄貴が飛び出してきた。
兄貴は俺より一個年下だけど、大野組には1年前から居る。
だから俺の兄貴分になる。
「こいつ倉庫に閉じ込めとけ。学校も行かさなくていいから」
「ボン…」
「あんだよ…なんか文句あんのか…」
「いえ…でもこいつ明日から試験で…」
「ああん!?」
「頼んますっ…」
相葉の兄貴はその場で土下座した。
「俺ぁ、バカだから高校なんていけなかったけど、こいつは利口なんで…頼んます!学校には行かせてやって下さい!」
ボンは溜息をつくと俺の顔を見た。
「櫻井どう思う?」
「は?え?俺?」
「ああ」
ボンはしゃがみこんで相葉の兄貴の髪を掴んだ。
「どっちが、潤のためだと思う?仁義を教えこむか…勉強教えこむか…」
「ボン…頼んます…」
「櫻井」
俺は泣きそうになってる相葉の兄貴と、蹲ってる松本を交互にみた。
「じゃあ…両方で」
「は?」
ボンは俺を見上げた。
「相葉の兄貴を閉じ込めて、松本は学校に行かせたらどうでしょう」