第5章 翼をもがれた竜-episode1-
そのうち、ボンに車が与えられて俺は運転手をすることになった。
「ボン、20歳になったんだからちゃんと仕事しろよ!」
客分の慎吾さんがボンの頭を撫でていく。
「慎吾兄、気安く俺の頭触るんじゃねえよ」
笑いながら手を払いのけると、慎吾さんは微笑んだ。
「おめえも一人前になったんだな、え?」
「チンコの皮、ずるむけたんだよ」
慎吾さんは爆笑して去っていった。
「むははは…参ったか!」
子供みたいだった。
だけど、不思議とバカにする気も起きなくて。
「よし…じゃ、いくか…」
組事務所から出るとき、松本が学校から帰ってくるのとすれ違った。
「あ…お疲れ様です」
ブレザーを着崩した松本はとっさにネクタイを締めた。
智さんは無言で松本を殴り倒した。
「てめえ…ネクタイくらいきちんと締められねえのか」
「すっ…すいませんっ!ボン!」
「ああ…?てめえは何しに高校行ってんだよ!?潤!」
「すいませんっ…すいませんっ…」
「俺の前だけで取り繕ろおうとしたな、てめえ…」
「すいませんっ…」
床に蹲る潤を、ボンはボコボコに蹴りあげた。
「てめえ、ヤクザ舐めてんじゃねえぞ…仁義欠いたら、真っ先に消されんのてめえだぞ?ああ?」