第56章 傾城屋わたつみ楼
緊張…してきた…
いや、もともとしてる。
だけど、引き回しの雅紀に連れてこられた風呂に一人で浸かっていると、もっと緊張してきた。
だいたい、男相手に勃つんだろうか…
「櫻井様、入りますね」
雅紀が風呂の中に入ってきた。
「お背中お流しします」
常連になると、おいらんの持っている部屋の風呂に入るらしいが、今日は初会だから一階にある湯屋に入れられてる。
檜造りの湯船を出て、木でできた椅子に座ると雅紀が背中を泡立てたタオルで擦ってくれる。
「緊張なさってますね」
「あ、ああ…こういうところ自体初めてで…」
「そうですか…そういうお客様は珍しくありませんから、どうぞリラックスなさってください」
「そうなんだ…」
身体を洗っている間、雅紀からまた注意事項を言い渡された。
曰く、コンドームは必ず付けること
曰く、ローションを必ず使うこと
曰く、手荒な真似は絶対にしないこと
曰く、特殊なプレイがしたい場合は前もって言うこと
「とくしゅな…プレイ…?」
「まあ…中には敵娼にメイド服を着せたりする方もいらっしゃいましてね…そういうのは事前に私に伝えてください」
「安心してください…そういう趣味はないです」
「かしこまりました」