第51章 【Desire】23 みきちんさまリクエスト
ロードワークに出ると、少し静かな町並みを走る。
3年目にもなると、学校の周りにとても詳しくなってくる。
夕方になっていく空の茜色に染まる街は綺麗だ。
だんだんと無心になってくる。
無心になると、決まってあの人のことを考えてしまう。
あんなに身を乗り出して、何を見てたんだろ
確かあそこは、生徒会室のはずだ。
今頃会議とかやってるはずなのに、なにしてんだろ…
思わず笑いがこみ上げてくる。
いつも精一杯大人ですって顔してさ…
実は一番子供な心を持ってる。
ロードワークから戻ってくると、校舎を見上げる。
もうあの窓には誰も居なかった。
少し残念に思いながら体育館まで戻る。
その途中、渡り廊下から中庭を見た。
「あれ…智…」
中庭の芝生の上で、クラスメイトの智がスケッチブックを持って熱心にスケッチしている背中が見えた。
バタバタと前方から音が聞こえて目を遣ると、渡り廊下の入り口に翔の姿が見えた。
「あれ?雅紀?」
「翔…どうしたの?生徒会は?」
「今、休憩。窓から智くんがここに居るのが見えたから」
「そっか…」
翔は嬉しそうに中庭に目を遣った。
「あ、ねえ。部活終わったらカラオケいかない?」
「いいよ。あ…智くんも誘ってもいい?」
「もちろん」
「ありがと!雅紀!」
手を振ると、いい笑顔で翔は智のほうへ走っていった。
「応援…してるよ…」
聞こえないだろうけど…俺は君の気持ち、知ってるから…
僕の好きな人は、叶わぬ恋をしている