第51章 【Desire】23 みきちんさまリクエスト
バスケ部のロードワークなんだろう。
ジャージを羽織って、校門に向かっていくところだった。
「雅紀ー!」
呼び止めると、俺を見てにっこりと笑った。
1年の時からのクラスメイトだ。
「和」
目の端に笑いじわができる。
「ロードワーク?一人なの?」
「うん…ちょっと遅れちゃったから、俺だけ」
「そっか…」
「ニノは?」
「俺、いまから用具の点検しなきゃいけないんだ」
これも今の俺には大事な仕事だから。
ちゃんとやらないとね。
怪我して、チームには迷惑かけてるから…
「そっか、重い物運ぶなら手伝うけど?」
「ええっ…いいよ!早くロードワーク行きなよ!」
「だって、肘…まだ本調子じゃないんでしょ?無理すんなよ…?」
「うん…」
なんでだろ。
雅紀のいうことには素直に頷けた。
「潤に謝っとけよ」
「えっ…」
「おまえのこと心配してるから怒るんだぞ?」
ちらりとマウンドを振り返ると、潤くんは一心不乱に投球練習をしている。
「わかった…」
返事をしたのに、雅紀は上の空だった。
「どしたの?」
「あっ…いや…なんでもない」
慌てて雅紀は走り出した。
「じゃあな!ニノ!」
背中を見送ってから、ふと雅紀が眺めてた方向に目を遣った。
校舎の向こうには、暗くなり始めた空が見える。
校舎の3階の窓が開いている。
そこから身を乗り出すようにしているのは、これまたクラスメイトの翔ちゃんだった。
「…やっぱ…そうなんだよね…?」
雅紀は時々、夢見るような目で翔ちゃんのこと見てる。
「…渡さないから…翔ちゃんには…」
俺の好きな人は…生徒会長に恋してる