第51章 【Desire】23 みきちんさまリクエスト
ピッチャーマウンドに居るあいつに向かって全速力で走った。
「ちょっと!やめさせて!そいつ肘が…」
叫んでる間に、ニノはキャッチャーに向かって全力でボールを投げた。
「いやったー!ストライク!」
「てめえ!何やってんだよ!」
喜んでるニノの肩をガシッと掴んだ。
「何って…ちょっとだけ…」
「ばかやろう!ここまでくるのにどんだけ掛かったと思ってんだよ!まだ治ってねえんだからおとなしくしてろっ…」
「なんだよ…たまには投げないと、鈍るだろ!?」
俺の手を振りほどいて、ニノはファーストに向かって走っていく。
「おらー1年、早くボール集めろよ!」
1年たちの元気のいい返事が聞こえると、ニノは俺を振り返ってあっかんべーをした。
「ガキかよ…」
帽子を取って、空を見上げた。
夕闇が、西の方から青空を侵略してる。
その時、監督から俺に声が掛かった。
「次、松本ー!そのまま投げろ!」
「はいっ…」
帽子を取って監督に向かって礼をすると、グローブから硬球を取り出した。
あ…智にちゃんと礼言ってなかった。
グラウンドの後方の築山を振り返ると、もうそこには智の姿はなかった。
「悪いことしちゃったな…」
また正面を振り返って、ピッチングの準備体勢に入る。
その時、ネット裏をニノが走っていくのが見えた。
「雅紀―!」
その目線の先には、クラスメイトの雅紀が居た。
俺の好きな人は…別の奴が好き