第50章 【Desire】22 チャコさまリクエスト
鮮烈だった―――
彼がこの屋敷に来た日のことを、忘れることはできない。
大きな瞳に、桜色の頬。
燃えるような赤の唇はふっくらとして…
こんなに美しい人間がいるのか
息をすることも忘れて見つめた。
フットマンとして15歳でこの屋敷にやってきた。
だが、旦那様の意向で見込みのありそうな者は、然るべき学校に通いながら働くことになっている。
彼もまた、優秀な成績で中学を卒業し、高校へ通いながら屋敷で働くことになった。
夢のような日々だった
少年から大人の男になっていくのを、眩しい思いで眺めていた。
この思いが…一体何なのか…
あの日までわからなかった。
いや、わかっていたのかもしれない
だが、認めることができなかった
彼の部屋で絡み合う二人を見てしまったあの日
何かが、自分の中で崩れ去っていくのがわかった
そう…あの日から…
私は鬼になったのだ
眠る櫻井の髪を静かに撫でる。
苦悶に満ちた顔を眺めながら、笑い出すのを堪えるのに精一杯だった。
「おまえの大事な物…なくなっちゃったね…」
その大事なものを奪ったのは…
この私…
「もっと…堕ちればいい…」
私を裏切ったおまえを許しはしない