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ヘブンズシュガーⅡ【気象系BL小説】

第50章 【Desire】22 チャコさまリクエスト


目が覚めると、部屋の中は真っ暗だった。
喉が乾いてしょうがない。
まだ熱は下がらないようだ。

ベッドサイドにおいてある棚に手を伸ばす。

その手に何かが触れた。

「水か…?」
「あ…松本さん…」

松本さんの冷たい手が、私の手を包んでいた。

「…ずっと傍にいてくださったんですか…?」
「今日は暇だったから…」
「すいません…」
「いいんだ。さ、起きられるか?」

そう言うと、私の背中に腕を入れて抱き起こしてくれた。

「まだ身体が熱いな…」
「はい…すいません…」
「謝る必要はない。病が治ればまた取り返せばいい」
「はい…」
「さあ、飲んで…」

コップに水を注ぐと、口元に持ってきてくれた。

「あ…自分で…」
「いいから」

松本さんの胸に寄り掛かるようにして、なんとか水を飲み干す。

「まだ飲みたいか…?」
「はい…喉が、とても乾いて…」

また水をコップに注ぐと、唇に押し当てられた。

「さ…飲むんだ…」
「ありがとうございます…」

熱で上手く思考が回らない。
だけど、松本さんの優しさが染みた。

「薬を…」

松本さんの手のひらには錠剤が乗っていた。

「はい…ありがとうございます…」

指で摘んで私の唇に触れる。

「さあ…飲んで…」
「はい…」



その時、窓辺に揺らめいていた影がゆっくりと近づいてきた。



ああ…早く私を…連れて行ってください…




「和也様…」

眠りに落ちながら呟いた櫻井の顔をじっと見つめる。
激しい妬心が湧き上がって、首に手をかけた。

ばさっと、背後で音がした

振り返ると、櫻井の書棚から一冊の本が床に落ちていた。

吸い込まれるようにその場所まで歩いて行く。

「千櫻記…?」

何も考えず、その頁を手繰った。








僕はわかっていた

君を許さない



さあ…命の灯火が消えるまで



のたうち回るがいい









ばさり、手から本が落ちていった―――









END

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