第48章 【Desire】20 玲聖さまリクエスト
「おおい!こっちに酒持って来いや!」
反乱軍と政府軍の小競り合いが続いていても、酒は飲みたい、女は抱きたい。
そんな男たちが毎夜通っている酒場に、二宮は居た。
連合した反乱軍の統括に就任した大野の片腕だ。
「あーっ…ちょっと、待て!」
「いいじゃねえか…もう負けを認めたら?」
賭けチェスが二宮の得意とするところだが、今日は劣勢である。
頭をうんうん悩ませていると、すっと盤面に手が伸びてきた。
「これをここに…」
それは男の手だった。
男は二宮の向かいに座る反乱軍の将校の顔を見ると、にっこり微笑んだ。
「おいあんた…そりゃあねえぜ!」
「チェックメイト」
男は二宮をみると、いたずらっぽく笑った。
毎日が戦場のようだった。
反乱軍付きの医師である相葉は、不戦の約があるにも関わらず毎日出続ける怪我人を治し続けていた。
毎日、どこかで小競り合いが起こっているのだ。
たまに政府軍の兵士が紛れ込んでいることもある。
だけど、生命の前では医師は中立だ。
何も言わず手当をすると、すぐに政府軍の病院へ送り出す。
その日も政府軍の兵士を送り届けていった帰りだった。
「痛いよお…」
道端で転んで膝から血を流す子供を見つけた。
東京はずっと続く小競り合いで、道路すらなくなっている場所がある。
土のむき出しになった道端で、子供はしゃがんでいた。
「大丈夫?今、見てあげるからね」
なんとか水の出る場所を探し出し、子供に応急処置を施す。
「手伝います…」
声の主は、男だった。
その男はテキパキと相葉を手伝うと、おもむろに相葉を見た。
「…君も、怪我してるよ」
くすくす笑いながら指さされた肘から、血が流れ出していた。