第45章 【Desire】17 りおなさまリクエスト
「雅を死なせるくらいなら、俺が死ぬ」
「潤…」
「雅が死ぬのならば、俺も死ぬ」
「やめろ…俺はおまえを利用したんだ」
「知っておる、そんなこと。俺のことはどうでもいい。雅…こんなことをしても、無門は帰って来ぬ」
「…わかっておるわ…戻ったとて、生きられるかもわからぬ。ならば、無門は翔どのと生きることを選ぶだろうよ」
裏切り者には死を…
例え投降してきたとて、死を賜るだけだ。
ならばとことん、生きるだろう。
無門なら…できる
「無門に殺してほしいのか」
雅はなにも答えない。
「それでも…無門の心は雅には向かない」
「…そんなこと、わかってる」
「俺は、雅の心がどこを向いていたっていい」
潤はじりっと足を動かした。
びくりと雅の体が震える。
「逃げよう…?雅…」
伊賀の里者で居る限り…
無門と翔を付け狙っていかねばならぬ。
そして、雅にも潤にも安息は来ないだろう。
「俺と一緒に…」
いつの間にか、二人のそばに影があった。
まるでそこに大昔から居るような風情で立っているのは、無門だった。
「無門っ…」
咄嗟に二人は飛び上がって近くの大木に身を隠した。
潤は懐から短刀を取り出すと、柄を口に咥えて辺りを見渡した。
「遅い」
聞こえたのは翔の声。
潤の腕を焼けるような痛みが走った。