第45章 【Desire】17 りおなさまリクエスト
やがて雨の音が止み、空が白んでくる。
「行こう…」
二人はまっすぐに大津に向かった。
宿場の外れの小川の辺りにある小さな小屋。
ここに無門と翔が暮らしている。
遠くから小屋を伺う雅は目を細めた。
「…これは…容易には近づけないな…」
「うん…」
見るものが見ればわかった。
そして見るものにわかるように罠を張り巡らせているのだろう。
「やっぱり…あの二人には敵わないなあ…」
久しぶりに笑った雅の顔は、少し幼くなった。
何をするでもなく、小屋が見渡せる大きな木の下で二人は過ごした。
小屋からは物音一つ聞こえてこない。
まるで誰も居ないようだが、雅と潤にはわかっていた。
居る。
姿は見えないけど、その存在をひしひしと感じた。
雅と潤も、その姿を隠そうとはしていなかった。
小屋からきっとその姿は見えている。
なにもないまま、昼が来てやがて夜が来ようとしている。
忍びは三日ほどは、飲まず食わずで居られるよう訓練されている。
そして”待つ”ことも、忍びの大事な任務。
待つことで、相手に必ず隙が生じる。
そこを衝くのが忍びの役目なのだ。
夜の帳が降りてくる。
鮮やかな夕焼けの朱が辺りを染める。