第45章 【Desire】17 りおなさまリクエスト
大津に鬼が棲んでいる―――
仲間の草からの情報は正確だ。
雅は潤を連れて、大津を目指していた。
「寒くはないか…?潤」
「うん…」
潤の身体を我が物にした雅は、死出の旅立ちとも言える無謀な役目についていた。
それもそうだ。
裏切り者の無門と翔を殺す
これが、どんな意味を持っているのか…
雅には嫌というほどわかっていた。
あの二人には、今の伊賀の里者では束になっても敵うまい。
同じ役目を負っていた潤の二親も、消息が知れない。
多分、返り討ちに遭ったのだろう。
潤にはそれをよく言い聞かせてある。
「雅…これを…」
「いや…おまえが着ていろ」
旅装束のまま、粗末な地蔵堂の隅で夜を明かす。
春先とはいえ、夜は冷え込む。
空っぽの心と身体を二人は寄せ合っていた。
無門と翔を見つけ出し、殺す
それだけが今の二人の生きる理由。
「雨が降りそうだ…」
「そうだね…土の匂いが濃い…」
明け方、雨の音が地蔵堂に響く。
二人は眠るでもなく、ただ身体を寄せ合いその音を聞いていた。
「今日、まっすぐに大津に入ろう」
「うん…」
「その足で、そのまま行ってしまおうか…」
「雅…」