第41章 【Desire】13 ガーベラ♡さまリクエスト
夏休み、先輩の美術部の部活終わりに待ち合わせして、何回もカラオケに行った。
先輩は美大を受験するらしく、塾にも通ってるんだって。
部活と塾で息が詰まるから、ストレス発散だって言って。
「やべー…二宮と居ると何時間でも歌えるわ」
「僕も…先輩、歌上手いから。ずっと聴いていられる」
「ば、バカ。恥ずかしいこと言うな」
そう言って照れる顔も、なんだかかわいい。
夏休みだったから、部活の見学もさせてもらった。
僕は絵心がないから、美術部なんてとても無理だったけど。
先輩の絵は凄いなと思った。
夏休みだから、あんまり真面目に部活にきてる生徒も居なくて。
日がな一日、先輩の絵を描くのにつきあったりした。
キャンバスに向かって油絵の具を塗りつけていく音を聞きながら、先輩の真剣な横顔を見ている。
きれいだな、と思った。
普段はぼーっとしてるけど…絵を描く時は別人みたいな顔をする。
歌声と一緒で…
そんな先輩の横顔を、いつまでも見てられるなと思った。
夏は、暑くて嫌いだ。
だけど、不思議と去年の夏の記憶のフォルダには、楽しい思い出しかなかった。
3年と1年だから、新学期になったらさすがに遊ぶ回数も減ったけど…
それでも僕と大野先輩は、週に一度は必ず遊びに行く友だちになった。
僕は…冬になる頃には気がついていた。
大野先輩が、好きなんだなって。
だけど、僕は男だ。
こんな気持ち、言えるわけない。
ずーっと黙っていよう。
笑顔で、卒業する先輩を送り出してあげよう。
そう、思ってたのに…
「最近、元気ないな?」
先輩の最後の部活の日。
受験のため、部活をやめてなかった先輩は、合格の決まった3月にやっと引退した。
その荷物を運ぶのを手伝うために美術室に行く途中だった。
「そ、そんなことないですよ…」
「なに?俺が卒業して会えなくなるの、そんなにさみしいの?」
冗談交じりに言われた言葉が、なんだか胸にズシンと来た。
会えなくなる…
先輩と、もうこんな時間持てなくなるんだ…