第41章 【Desire】13 ガーベラ♡さまリクエスト
数日経って、その答えが見つかった気がした。
大野先輩と美術の女の先生が歩いているのを見かけた。
先生になんか用事をいいつかったみたくて、たくさん本みたいなのを持たされてる。
だけど、先輩はちっとも嫌そうな顔をしていなくて…
ああ…もしかして、大野先輩と先生つきあってるのかな…
そう思い至って、あの時の先輩の姿を思い出した。
「あっ…」
顔が赤くなる。
もしかして…イケナイコトしてたのかな…
このあたりの記憶は、桜の花びらが舞う風景と同じフォルダに入ってる。
その日から、僕は大野先輩のことが気になってしょうがなかった。
大野先輩の姿を、いつも探してた。
たまに廊下ですれ違うと、目が合って。
最初は気まずそうにしてたけど、そのうち大野先輩は僕に微笑み掛けてくれるようになった。
その笑顔が…胸に焼き付いて
何度でも見たくて。
ずっと僕は大野先輩の姿を探し続けた。
…夏休みになる前。
先輩の表情が暗くなった。
どうしたんだろう
なにかあったのかな
そう思っても、友だちになったわけでもないし…
聞けないまま終業式を迎えた。
その時、美術の女の先生が結婚で遠方に引っ越すから、退職するってことが発表された。
「大野先輩!」
生徒玄関で、先輩が来るのを待った。
こんなことするの、初めてだった。
「え…二宮?」
先輩は、運良く一人で居た。
「あ、あの…カラオケ、行きませんか!?」
凄く…
凄く考えたんだけど…
励ます方法なんて、見つからなかった。
だけど、僕はなんとかして大野先輩を励ましたかった。
元気になってほしかった。
また、あの微笑みを見せてほしかったんだ…
「カラオケ」
「はい…あっ…」
突然何言ってんだ…
仲いいわけでもないのに。
それに、今日は終業式で。
先輩の仲のいい友達と約束してるかもしれないのに。
「ご、ご、ごめんなさいっ…突然こんなこと言って…」
「え?」
「迷惑ですよね…し、失礼しますっ…」
「あっ…おい、待てよ!」
がしっと手首を掴まれた。
「いいよ。行こ?カラオケ」
なんだか夢を見てるみたいだった。
先輩はとっても歌が上手くて。
僕もうまいって褒められて。
二人で4時間以上歌っちゃった…