第41章 【Desire】13 ガーベラ♡さまリクエスト
僕と同じブレザーを着てる。
ネクタイはエンジ色で、3年生だ。
そのネクタイは、不自然に乱れていた。
それを慌てて直しながら、その人は俺に近づいてきた。
「どうした?迷った?1年だよね?」
先輩は僕のグレーのネクタイを見ながら言った。
…なに、してたんだろ…
美術準備室は、美術の先生がいるところで…
生徒がこんな時間に入っていい場所じゃないはず。
僕の視線に気づいたのか、先輩はちょっと気まずそうな顔をした。
「誰にも…言うなよ?」
「二宮、先輩が呼んでるよ」
その日の放課後、先輩は僕を訪ねてきた。
「なん…ですか…?」
あの後、先輩は僕を視聴覚室まで連れて行ってくれた。
校舎は一個向こうだった。
歩いてる間、先輩は何を言うわけでもなく…
「何組?」
「え…5組です…」
「名前は?」
「二宮です…」
「そ。俺、3年の大野っていうの。よろしくな」
「はあ…」
”誰にも…言うなよ?”
って…なんのことだろう。
やっぱ、後ろ暗いことやってたのかな。
「…あのな…」
「え…?」
廊下は、明るくて…
太陽の光が、先輩のちょっとだけ茶色い髪をキラキラ弾いてる。
短く切ってある前髪を、少し立てて。
全開になったおでこの下には、ハの字になった眉毛がついてた。
困っているらしい。
「いや…あんでもね」
視聴覚室につく前に、先輩は消えてしまった。
「ちょっと、来いよ」
先輩は強引に僕を引っ張っていった。
そのままぐいぐいと屋上の入り口まで連れて行かれた。
「あのな…さっき見たこと、誰にも言うなよ?」
また念を押された。
視聴覚室まで連れて行ってもらったし、僕は大野先輩のことよく知らないから言う人も居ないし…
なんでこんな必死なんだろ。