第39章 【Desire】11 智の心さまリクエスト
不思議と焦りはなかった。
ここで野垂れ死ぬのも悪くないなあ…
草に覆われたそこは、何かがあった場所なんだろう。
よく見ると、その中央には大きな岩があって。
しめ縄のあった跡もある。
きっとここには、もう何年も人が来ていないんだ。
ふらふらと近づいて、岩に寄りかかるように座り込んだ。
”最低ー、大野さん”
突然、フラッシュバックした。
”彼女、ずっと大野さんのことが好きだったんですよ!?”
「知らないよ…そんなこと…」
会社を辞めるきっかけになったのは…
同僚を振ったから。
付き合ってる相手もいないのに、同僚を振った俺は最低なんだそうだ。
そこからずるずると悪い噂を流されたり。
振った復讐をされたわけだ。
「くだらねえ…」
そう思うのに…
身体が震えだした。
毎朝、会社に行きたくなくて吐き気を堪えながら電車に乗っていたことを思い出した。
極限まで疲れてるのに眠れなくて。
ベッドの中で震えながら朝が来るのを待ったことを思い出した。
「う…」
こみ上げてきた吐き気を堪えて、その場に蹲った。
…もう、どうでもいい…
早く、死にたい
ここではない何処かに…
逝ってしまいたかった