第4章 185階の家
風呂から上がると、そっとリビングを覗きこむ。
相葉さんはもう着替えてて、せっせと夜食の準備をしてる。
「あ、ニノ。平気…?」
「うん…相葉さん…」
ちょいちょいと手招きをすると、素直にこちらに歩いてくる。
相葉さんの手を引いて洗面所に行くと、手を伸ばしてドライヤーを掛けてあげた。
「…風邪ひいちゃうでしょ…」
「ニノ…」
鏡越しに、相葉さんがにっこりと笑ってくる。
俺はまたちゃんと見られなくて相葉さんの髪の毛ばっかり見てた。
乾かし終わると、相葉さんはドライヤーを俺の手から取っていった。
「俺も」
短くそう言うと、俺の髪を乾かし始めた。
鏡越しに相葉さんの顔を見てたら、とってもとっても愛おしそうに俺の髪、乾かしてんだ…
そんな顔…いつもしてたっけ…?
「ん?なに?」
鏡越しに目が合うと、相葉さんは笑いかけてくる。
「なんでもないよ…」
また俺は目を逸らしてしまう。
相葉さん…いつから…?
いつから俺のこと…
全然気づかなかった。
だって相葉さんはいつも優しい。
誰にだって優しい。
そう…誰にだって、この人優しいんだもん。
いつも勘違いした女の子に、告白されてんじゃん。
ほんとに俺のこと…好きなの…?