第37章 【Desire】9 mimimamaさまリクエスト
また雨が降ってきた。
和也と智くんは俺を担いで、和也の店の事務所に入った。
「なんか…服持ってくるから待ってて…」
和也が事務所を出ていく。
震えながらしがみついている俺を、智くんはきつく抱きしめてくれた。
「大丈夫だよ…翔くん…もう大丈夫だから…」
「智くんっ…智くんっ…」
身体がびしょ濡れなのに、智くんはぎゅっと抱きしめてくれる。
智くんの上着に包まれてるのに、だんだんさっきのことを思い出してきて、身体が震えるのを止められなかった。
「俺…俺っ…」
「いいから…何も言わなくていいから…」
その優しい声を聞いているうちに、涙が出てきた。
「…たくさん、泣きな…?」
「さと、しくっ…」
子供みたいに泣いた。
いつの間にか戻ってきた和也も、俺のこと抱きしめて…
一緒に泣いてくれた。
「翔ちゃん…もう大丈夫だからね…俺達がいるから…」
「和也…あああああ…」
服も…なにも着ていなかった…
和也と智くんは、二人で飲みに出ていたそうだ。
家に帰る途中、店の前に俺のカバンが落ちていて、何かあったに違いないと、俺のこと二人で探してくれていたのだそうだ。
雨に濡れて、俺は路地に放り出されていたらしい。
周りには、俺の着ていた服が雨に濡れて散乱していたということだ。
「…落ち着いた?翔ちゃん…」
和也が、ホットミルクをテーブルに置いてくれた。
持ってきてくれた毛布にくるまりながら、マグカップを手に取ると温かかった。
「うん…ごめんな…」
「翔ちゃんが謝る必要ないっ…」
「かず…」
智くんが、和也の肩を抱いた。
そっと泣いている和也のまぶたに、智くんはキスを落とした。
「おまえが泣いたらだめだよ…?」
「うん…」
いつからだろう…
この二人が愛し合ってるのは…
知っていた
俺はただ、それを眺めているだけだった
だって、俺は和也じゃない
だって、俺は智くんじゃない
二人に…必要とされてないんだから…