第36章 【Desire】8 くりんさまリクエスト
プロジェクト発足の日、櫻井さんの会社と俺の会社合同で小さいながらも懇親会が開かれた。
これから長い付き合いになる。
うちが発注を受けたから、ほんとだったら櫻井さんの会社を接待しなきゃいけない立場なんだけど…
櫻井さんはそんなことさせなかった。
あくまで、対等な立場で。
そう言って譲らない。
今までいろんな会社のシステムを担当してきたうちの社のノウハウを分けてもらうんだからと。
俺は営業だけど、櫻井さんの強い希望でうちの社の担当窓口になった。
合同プロジェクトの一員になったのだ。
だから…この先、ずっと櫻井さんと一緒に仕事をすることになる。
都内ホテルの小さな広間で、それは行われた。
両方の会社の社長から幹部、それからプロジェクトのメンバーが全員揃った。
小さいながらも懇親会は緊張感に満ちたものになった。
俺と櫻井さんは、懇親会を仕切っている。
こうやって一緒に仕事できるなんて。
夢を見ているようだった。
親睦会は和やかに流れた。
俺と櫻井さんは忙しく立ち回っていたけど、やっとフリーの時間を得て、休憩に入った。
「松本さん、ちょっと出ませんか?」
そう言って櫻井さんは俺を喫煙所に連れ出した。