第35章 【Desire】7 チェックさまリクエスト
櫻井side
「たりーな…」
「ああ、まじたりい…」
廊下をペタペタと校内履きを鳴らしながら、移動教室で歩いてる。
こいつは、1年のときも同じクラスで。
2年になっても同じクラスになったから、自然とつるむようになった。
男バスのキャプテンで、爽やかでイケメンなこいつは、今じゃ俺の親友だ。
「あー…俺、ちょっと生徒会室寄ってくわ」
「あに?仕事?」
「ん。先行っててよ」
「いいよ、俺も付き合う」
「わりいな」
この1月、俺は生徒会長になった。
前期も生徒会書記をしてたから、選挙は楽々の当選で。
もちろん応援弁士は、こいつを始めいろんな奴がやってくれて…
みんなで俺を生徒会長に推してくれた。
これで内申点は完璧で。
大学は推薦で行く予定だ。
こいつも、スポーツ推薦を受けるべく部活を頑張ってる。
「なあ、翔ちゃん」
「んー?」
「3年なっても同じクラスになれるかわかんないじゃん?」
「ん…まあ、そうだな」
生徒会室に入ると、金庫に入ってる原稿を取り出した。
これを顧問の先生に見てもらわなきゃいけないのを忘れてた。
在校生代表の卒業式の挨拶だ。
原稿を抱えて立ち上がると、すぐ俺の後ろに立っていた。
「な、なんだよ、近えな…」
「だからさー」
なんだか、様子がおかしい。
「思い出、作らねえ?」
「え?なんの?」
ゆっくりと、俺の手の中にある原稿を取られた。
そのまま後ろの作業テーブルに置くと、俺の腕を引っ張った。
「えっ!?」
「シよ?」
「なっ…なにをだよっ…」
胸板を押して抵抗するけど、俺は運動部でもないし。
力の差は歴然で…
無駄な抵抗だとわかってたけど、暴れてたらいきなり腹を殴られた。
「ぐっ…」
「大人しくしてよ…1時間しかないんだからさ」
見上げると…
見たこともないオスの顔した男が居た。
「やめて…俺、男…」
「わかってるよ、そんなこと…」
ぐいっと前髪を掴んで顔を上げられた。
「かーわいい…俺、ずっと狙ってたんだ。翔ちゃん…」
その笑顔は、いつもと変わらない…
爽やかな笑顔だった。