第33章 【Desire】5 リンネコさまリクエスト
「うわー!ここ、こんな顔してたんだー!」
「全然みえなかったもんね、ここ。オーロラにも映ってなかったし」
「そうだよお!こういうとこ、ちゃんと映してほしいよね!」
「ほんとほんと!」
画面の中のディスコスターは、本当にカッコよくて。
コンサートツアーは一年に一回しか無くて、本物を拝める機会は本当に少なくて…
いつもテレビで映る彼を、ため息をつきながら見ている。
だからライブDVDは本当に貴重なもので。
ファンは一年に一度発売されるのを楽しみに待っているのだ。
「あ~楽しかったなあ…」
帰り道、独り言を言うくらい鑑賞会は楽しかった。
今までこんなにディスコスターのこと語れるやつなんて居なかったから、本当にこういうことが楽しくて仕方ない。
それに…男のファンって珍しいんだよね。
ディスコスターのファン、女の子ばっかだから…
今度、ディスコスターのファーストDVDを鑑賞することを約束して、二宮くんの家をお暇した。
スキップでもしそうなくらい、とっても楽しい時間を過ごした俺は、上機嫌だった。
「んふふふ…」
駅に向かってあるきながら、ニヤニヤと笑ってしまう。
とても怪しい人だから、マフラーに顔を半分埋めた。
地下鉄の階段を降りようと、入り口に差し掛かったとき。
サラリーマンが俺の前をすごい勢いで走っていった。
「すんません!」
謝っているのが聞こえたが、俺はその声を聞いたまま後ろにひっくり返ってしまった。
「痛い…」
ごちんと頭をコンクリに打ち付けて、悶絶した。
「…大丈夫?」
すっと目の前に、手が差し出された。