第32章 【Desire】4 さちえさまリクエスト
そんな日々が過ぎて、いよいよ卒業式の朝。
3年生は希望者以外、寮を引き払って私物を実家に持ち帰ってたりして、忙しい日々だった。
だから二宮ともやっぱり二人きりでは会えていなかった。
でも、卒業式の後は二人で出かけようって約束してた。
俺はなるべく二宮と離れたくなくて、この日まで寮に世話になっていて、荷物を持って寮母さんに挨拶をして出た所を、呼び止められた。
「相葉…」
例の…二宮が告白してた中庭の銅像のところまで連れて行かれた。
ここは植栽の影になってて、周りからは見えにくい場所だから、告白の名所?になってた。
いや、ここ男子校だけどね…
「あー…えっと、何?」
「すいません…初めて喋るのに…」
相葉はサラサラの前髪をかき上げると、ふーっと息を吐き出した。
「あの…二宮と…付き合ってるんですか?」
「ええっ…」
な、なんでわかったんだろ。
「いや…いつも一緒にいるから…」
「あ?ああ…」
美術室通い、見られてたのか…
「その…騙されていませんか?」
「え?」
「あいつその…前に俺に、告白してきたんで…」
「あー…」
それは俺も目撃したから、とは言えなかった。
「俺その時に、好きな人が居るからって断ったんです」
「そう…」
それも見た…
「その相手…大野先輩なんです」
「えっ…」
「だから…あいつ、嫌がらせでもしかして…」
「そんなことないっ!」
ちょっと、大きな声が出てしまった。
相葉はびっくりして俺の顔を見てる。
「あ…まあ、なんだ…その…俺、知ってるから…」
「え?」
「二宮が、相葉のこと好きだったの…知ってる」
「そうなんですか…」
「でも…」
「大野先輩」
遮るように言うと、ぐいっと相葉が俺の腕を掴んだ。
「な、なんだよ」
「俺…ずっと言わないでおこうと思ったけど…でも二宮と付き合ってるの知ったら…我慢できなくなりました」
「えっ…えっ…?」