第32章 【Desire】4 さちえさまリクエスト
その日から、放課後は二宮のための絵画教室になった。
新しくスケッチブックを買って、スケッチの基本から油絵の具の乗せ方、キャンバスの張り方までいろいろと教えた。
みるみるというわけにはいかなかったけど上達はしたし、二宮の絵は味があって、それがちょっと部内で評判になった。
俺もちょっとだけ二宮の隣で、スケッチブックに鉛筆を走らせた。
二宮って、顔がかわいいと思ってたけど…
実はよく見ると、凄く整った顔してんだよな。
なのに、表情が加わるとぐっとかわいらしくなる。
まるで尻尾振ってる柴犬みたいになる。
「…そんなに見ないで…」
「えっ?」
二宮が絵筆を握りながら、真っ赤になってる。
「は、恥ずかしいから…」
「ああ…ごめん…」
いつの間にか…俺達の距離はすごく近くなって…
肩が触れ合うほど近くに座ってる。
そっと伺い見ながら、俺は二宮の顔をスケッチしていった。
そのスケッチが完成する頃…
卒業式の練習が始まった。
受験などで滅多に揃うことのなくなっていた教室に、同級生が一同に揃うと、いよいよかって気分になってきた。
全寮制だけど、受験のため居ないやつも多くて…
久しぶりの空気は、なんだか懐かしい。
おかしいな…
まだ卒業してないのに。