第4章 185階の家
『もー!行くから!だから何階なんだよ!?』
ふっと笑いがこみ上げてくる。
でもここまでいじわるしたから、最後までいじわるしてやろう。
「じゃあ俺、非常階段の出口で待ってるから」
『は?』
「一階ずつ確認しながら登ってきなよ。ちなみに家、185階だからね?」
『ちょっ…そんな面倒くさいことできるかよっ、ニノっ』
まだだみ声が聞こえるけど、ぶちっと電話を切ってやった。
「…ばかだなあ…18階の1805号室なんだけどな…」
気づいてはいないだろう。
だってあの人はニワトリ頭だから。
俺はゆっくりとトイレに行ったりしてから家を出た。
18階の非常階段の扉を開けて、中を覗いてみる。
遅い時間だから、エレベーターが壊れていてもそんなに人が居ることはないだろう。
相葉さんはここを一人で登ってくるはず。
しばらくそこで下を見下ろして様子を伺う。
誰も来る様子はないから、階段に座って階段の間から下をずっと見ていた。
柵を持って下を覗き込んでいるけど、一向に相葉さんが来る気配はなかった。
「おっそいなぁ…」
スマホを見てみる。
素直にあれから電話をよこしたりはしていない。
俺が教えるつもりはないってわかってるんだろうな。