第28章 number00
「智…?」
充電中は動かないはずのショウの手が俺の頬を包んだ。
「泣かないで…?悲しいの…?」
アーモンド型のくりっとした目が、ぼんやりと俺を見つめてる。
「おいで…?抱きしめてあげる…」
「ショウ…」
「智…」
そっと腕を広げるショウの胸に飛び込んだ。
「かわいい…」
「ばか…男にかわいいって言うなよ…」
「それは命令…?」
「違うけど…」
「じゃあ、これからも言ってもいい…?」
「…いいよ…」
これも…プログラミングだってわかってるけど…
「智…かわいい…」
だんだん、ショウが俺の心に根っこを張る。
やがて、その根っこは俺の心臓にびっしりと張り巡らされて…
どこがショウでどこがおれの心臓だったかわからなくなった。
それから毎日、ショウは俺のこと姫扱いして…
家事ロボットのくせに、俺の旦那みたいな顔してさ。
「かわいい智…」
そんなことを言いながら、顔中キスしてくる。
くすぐったいけど、俺はこれをヤメロとは言わなかった。
なんだか、心地よかったから。
三ヶ月に一度、ショウはデータを取るのとメンテナンスのため、通販会社に回収された。
その日は一日寂しかった。
だんだん…
俺の生活には、ショウが欠かせなくなっていった。