第27章 SATOKO
芸術は爆発だ。
やっと最近、なんとか形になるようになって。
決心した。
今日しかない。
客が少ない日曜の今日、行こうって。
「ご注文ですか?」
「い、いえ…あの」
白いショルダーバッグに入れていたものを取り出した。
「これ、あの良かったら…」
「え?俺に?」
「あっ…はいっ…」
白い包装紙に包まれた小さな箱。
中には甘いボンボンが詰まってる。
「ほ、ホワイトデーだからっ…」
今日は3月の12日だった。
ホワイトデーにかこつけて渡せば、なんとか気持ちも伝えられるだろうと思った。
「あ、あの私っ…松本さんのことがっ…」
くすっと松本さんは笑った。
「ホワイトデーって…普通、男から女の子に物を贈るんじゃないの?」
「あっ…」
見た目は近づいたけど…発想が、完全に男だった。
ホワイトデーにはいつもお返ししてたから、そのノリで考えてた…
普通、女の子からの告白って…
バレンタインじゃないかあああああっ!!!!!
「それにさ…」
呆然としてる俺にカウンター越しに松本さんの手が伸びてきた。
箱を持つ俺の手を、ふんわりと包み込んだ。
「俺たち、初対面じゃないの?サトコちゃん…」