第27章 SATOKO
「でも、大野さ。マジで女に見えるよ」
「はあ?」
「そうだなあ…襟元はタートル着れば喉仏隠せるし…足だってロングブーツ履けばガニ股隠せるし…いけんじゃね?」
その時…
思いついてしまった。
一生、誰にも言うことのない思いを
一度でいいから、伝えたい
その日から俺は、会社の女の子をよく観察するようにした。
通勤途中でも観察した。
これまた同期の櫻井に、誰か好きな人でもできたかと問われるくらいに、女性を観察しまくっていた。
同僚の女子たちは、そんな俺を気味悪がったが気にしていられなかった。
それからネットで色々と買って、これならばという形を整えるのに二ヶ月かかった。
白のふわふわの素材のタートルのニット
薄いピンクのスカート
茶色のロングブーツ
栗色のロングヘアのフルウィッグ
体型を隠すもこもこのコートとストール
それから白い皮のショルダーバッグも忘れない
メイクは…これまた難関だった。
あの時は同じ課の女の子が面白がっていろいろしてくれたけど…
道具一式揃えてみたところで、俺は途方に暮れた。
でも試行錯誤してる中で気づいた。
これは芸術だ、と。
俺は高校の頃はこれでも美術部に居た。
化粧品を顔に塗りたくって絵を描くのと一緒だ!