第27章 SATOKO
家に帰って名刺をテーブルに出して、いつまでも眺めた。
「松本…潤…」
それから葛藤した。
俺はゲイじゃない。
ゲイなんかじゃない…
だけど、忘れられなかった。
次の週、もう一度自分の気持ちを確認しようと店を訪れた。
「いらっしゃいませ、大野様」
妖艶に笑いかけてくる松本さんを見たら、もう駄目だった。
やっぱり、俺…惚れたんだ
そう確信してからは、迷いがなかった。
だけど、線を引くことだけは忘れない。
俺は、男
松本さんも、男
一方通行だったけど、顔が見られるだけで充分だった。
この前の正月。
俺は新年会の余興で、女装をしてパフュームを踊った。
毎年の恒例で、係長クラスがやらされる。
年末の昇任試験に通ってしまった俺は、早速洗礼を受けた。
他の二人の同僚は、散々な言われようだったが…
なんと俺の女装は大好評で。
「いやあ…マジで、サトコちゃんとなら俺、寝れるわ」
同期の相葉が気持ち悪いことを言った。
「サトコ、キレイな男じゃないと嫌」
「っか~!堪んねえ!一晩でいいから、相手して?」
「やーだね」
相葉がツンデレ好きとは知らなかった。
まあ、よく男なのにツンデレと評判の二宮とつるんでいるから、どMなんだろう。