第27章 SATOKO
「どれも甘くて美味しい…」
「よかった…」
微笑むとグラスを磨き出す。
その姿は本当に格好良くて…
また見惚れてしまう。
店内にはジャズが小さく流れていて、静かな雰囲気。
ガヤガヤしたのが嫌いだから、これも心地よかった。
「あ…あの…」
「はい?」
程よく酒が回ってきたところで、勇気を振り絞った。
多分、一目惚れだったんだと思う。
こんなこと、初めてだった。
会社の先輩に連れられてきたこのお店で、カウンターの中にいるこの男に目が釘付けになった。
最初はこの気持ちがなんだかわからなかった。
だって、俺は男で…
今までの恋愛は、全部女相手だった。
俺はストレートなんだ。
なのに…俺、惚れちゃったんだよね…
美しく妖しい、この男に
「松岡さんの後輩…ですか」
「ああ。こいつ、煩いところが嫌だって言うから、連れてきたんだ」
「そうですか…ありがとうございます」
その男は、名刺を差し出してきた。
「J's Barの店主、松本と申します」
慌てて俺も名刺ケースを取り出して、名刺交換した。
「大野です。よろしく」
「大野…智さんとお読みするのですか?」
「あ、はいっ…」
「これからもどうぞ、ご贔屓に」