第27章 SATOKO
少しだけウエーブの掛かった前髪は長めで、耳にかけている。
白のシャツに、黒のカマーベスト。
黒の蝶ネクタイは細身で、シャープな印象を作ってる。
足元は、長いソムリエエプロンで覆われていた。
「…何か?」
気づいたら、また見惚れていた。
「う、ううん…」
頬が熱い…
日曜日の夕方…
他の客はまだ来ていない。
いっそ、このまま来なければいいのに…
不謹慎にもそんなことまで思ってしまう。
足元がスースーする。
いくらブーツを履いているとはいえ、スカートだからしょうがない。
席につくとき、コートは脱いでいたから肩に掛けていたストールを外して膝に掛けた。
「寒いですか?」
「あ…いいえ。お酒飲んでいるから大丈夫」
そう言ってるのに、エアコンの設定温度をちょっと上げてしまった。
「大丈夫なのに…」
「暖かくしていないと、風邪治りませんよ?」
そうだった。
そういう設定にしてるんだった。
「…ありがとう…」
まさかこんなに長い時間、ふたりきりで居られると思っていなかったから、夢心地になってきた。
長い髪は少し重いけど、俺の男の部分を覆い隠してくれる。
お酒のちからと上手くいった女装で上機嫌の俺は、次々とカクテルを飲み干した。