第25章 カウントダウン
轟音が拳銃から響いた
暫く動くこともできなかった。
部屋の中には、ただ静寂。
「え…?」
目を開けると、真っ暗な室内。
さっきまで、煌々と灯っていた蛍光灯は消えていた。
「なに…なんだよ…」
慌てて起き上がって体中を擦る。
どこも怪我をしていなかった。
鼻も触ってみたけど、鼻血も出ていない。
「どういうことなんだよ…」
ふらつく身体をどうにか立ち上がらせて電気をつけようとした。
その時、アパートの外から車のライトが室内を鈍く照らした。
視界の端に、床に倒れる足が映った。
「え…」
その足は、見慣れた足で…
再び暗くなった室内で、また動けなくなる。
キッチンの安っぽい床がミシリと鳴る。
なんとか足を前に出して、その足に近づく。
床に倒れる全身が見えたとき、俺はすべてを悟った
血溜まりの中、天使のように微笑んでいるおまえ
「嘘だろ…」
嘘だって言ってくれよ
果物ナイフを握る手を払って抱きしめた。
「おい…なあ…嘘だって言ってくれよ…!」
力の入っていない身体を精一杯揺さぶった。
「なあっ目を開けろよっ…」
いくら叫んでも、返事が返ってくることはなかった
冷たくなった身体を抱きしめて熱を分けても、温かくなることはなかった
「愛してる…」
愛してる…愛してる…
あの女は、ただの飾り
だから、帰ってこいよ…
「やっぱり…謝ってくれないんだね」
見上げると、銃をこちらに向けた智が微笑んだ
END