第25章 カウントダウン
「なんのことだよ」
スーツのジャケットを脱ぎながら、狭い部屋を歩いてくる。
「だから見たんだよ。女の人と一緒のとこ」
「ああ…あんなの友達だよ」
「へえ…」
「なんだよ?」
面倒くさそうに向けられた視線。
「別に…僕、ちょっと出かける」
「は?どこいくんだよ。その荷物なんだよ…」
「どこだっていいだろ」
キッチンの椅子に掛けてあったジャケットを手に取ると、狭い玄関でスニーカーを履く。
「待てよ」
慌てて駆け寄ってきて、僕の腕を掴む。
引き寄せられて、よろけた。
「なんだよ。離してよ」
「何、怒ってんだよ」
「怒ってないよ」
「友達だって言ったろ?信じられないのかよ」
僕には…わかる
「キスマーク」
「えっ…」
慌てて押さえたワイシャツの首筋には、何もない
「…じゃあね」
「ちょっ…待てよ!」
物凄い力でキッチンの床に投げ出された。
「何すんだよ…」
奥の部屋に向かって、荷物の入ったボストンバッグを投げつける。
「こんな荷物持って、どこ行くんだよ!」
「翔には、関係ない」
「ふざけんな…」
あの女には、できない
この想いには勝てない
駆け寄ってきた翔の足を引っ掛けて、キッチンの床に引き倒した。