第3章 車の中でかくれてキスをしよう
「翔ちゃん…これ、俺にくれるの?」
「ん…いいよ。ニノがもういいって思うまで持ってていいよ」
「…なんで…?」
「なんででも」
そう言うとニノの頭をぽんぽんと撫でた。
「いつでも、こいよ」
そう言って台所に行こうと歩き出した。
「飯、どうする?」
突然、後ろから抱きつかれた。
「ニノ…?」
「なんで…そんな優しいの…?」
「なんでって…」
俺はニノに自分の気持ちは伝えるつもりがなかった。
一生、自分の中で秘めておこうと思っていた。
伝えたところでお互い傷つくだけだろうと思ったから。
「ニノに早く元気になって欲しいだけだよ…」
昨日のキスは…
きっと抱きしめることの延長で。
ただ、触れていれば安心するんだろう。
人肌はそれほど、傷を癒やすから…
「さ、飯…食おうか…」
歩き出そうとするけど、ぎゅうっと抱きつかれて動けない。
「ニノ…どうしたんだよ…」
「俺…勘違いしちゃう…」
「え…?」
「こんなことされたら、勘違いしちゃうじゃん…」
「…何を…?」
ニノの熱い息が、背中に掛かる。
「俺のこと…好きなのかなって…」
「ニノ…」
「前も…あんなこと…してくれて…俺…勘違いしそうだった…」