第23章 BOY【S side】 EP.2
「いいから、家まで送るよ。事務所の送迎、断っておいたからね?」
「えっ…」
「また明日、ね?翔…」
ちゅっと智がキスをくれるのを、なんだか夢みたいだと思いながら受け止めた。
「翔、またおいで」
夢、だったのかな…
あれから普通の日常に戻った。
連絡先を聞き忘れるという痛恨のミスをしてしまったせいで、あの人達とは連絡も取れずに居た。
事務所にもなんとなく言い出せなくて。
俺はまた、昼はアルバイトで夜は身体を売る日々だった。
でも…
あの日から、俺は変わった。
ずっと胸の内側があったかい。
…もしかして、もう二度と会えないかもしれない。
でも、俺にとってあのひとときは…
生涯、忘れることのできない時間になった。
あの思い出があるから、生きていける…
生きて…みよう
そう、思った。
「最近、いいことあったの?」
事務所の奥から藤ヶ谷くんが声を掛けてくる。
ソファに座りながら雑誌を読んでいた顔を上げると、なんだかニヤニヤしている。
「なに…?」
「いや…いい顔するようになったなって…最近、評判だよ?可愛くなったって」
「ばっか…何言ってんだよ…」