第22章 BOY【S side】 EP.1
「じゃあ、興味あるようなら話だけでも聞いてよ。今から行ってもらうね?」
「え?今から?客じゃないんだね?」
「うん。でもちゃんと指名料も出るから…安心してよ」
そう言って、奥に居た送迎のお兄さんに声を掛けた。
「じゃあ、頼むね。櫻井ちゃん」
送りのお兄さんに聞いたら、今から行くのはそのビデオ制作会社の社長のとこなんだって。
社長と言っても社員は一人で、あとはアルバイト2人という小さな会社。
たった4人でビデオの制作から何からやってるんだとか…
「でもね。櫻井ちゃん…すっごくその会社のビデオ、評判いいの。今度、貸してあげようか?」
うふふとお兄さんが笑う。
「うち、再生するようなものないからいいっす…」
「え?ブルーレイないの?」
「ブルーレイどころか、DVDだってありませんよ…」
「そおなの…?今度、古くなったやつあげるわよお…」
「いえ、いいっす」
施しなんか、いらない
俺は俺の手で立派にあの二人を育て上げたら…
死のうと思ってた。
もうこの世に未練なんかなかった。
こんな屈辱的な仕事して、いい加減もうすり減ってた。
疲れてた。
だから…あいつらが成人したら、死のう
そう思ってる。
「櫻井ちゃん…たまには人に甘えるってことを覚えなさいよ?」